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大津町議会議員 金田ひできの『新風!』

熊本県大津町の議会議員、金田ひできのブログ 『新風(しんぷう)!』

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政治を経済学で考える

 経済学に「ナッシュ均衡」、「パレート最適(効率性)」という概念があります。

 まずナッシュ均衡から説明すると、これは「個人が自らの利益のみを追求した場合に起こる均衡状態」です。

 具体的なナッシュ均衡の例として有名なものに「囚人のジレンマ」がありますが、端的に言うと次のような状態のことを指します。

 2人の囚人がいる状況で、

①2人とも黙秘した場合は共に「懲役1年」
②1人が自白した場合、一方は司法取引で「釈放」になるが相手は「懲役5年」
③2人とも自白した場合は共に「懲役3年」


という条件を置くと、自分にとって最適な結果は「自分だけが自白して相手が自白せずに釈放になる状況(①)」で、最悪な状況は「相手のみが自白して自分が懲役5年となる状況(②)」です。

 つまり、相手の行動をコントロールできない事を前提におくと、いずれにしても自分の最良の選択は「自白」することです。

 しかし、互いが自分にとって最良であるはずの「自白」を選択すると、③の懲役3年となり、それぞれが自分にとって最良の選択をしたにも関わらず、①の懲役1年という結果よりも悪い状況になります。

 ここで強調したいのは、「個人の最良の選択が必ずしも「効用」(「幸福度」とでも捉えてください)の最大化には繋がらない」という事です。

※なお、辞書的意味では、ナッシュ均衡は「ゲーム理論の非協力ゲームのモデルで、プレイヤー全員が互いに最適の戦略を選択し、これ以上自らの戦略を変更する動機がない安定的な状態(均衡状態)になるような戦略の組み合わせ」のことを言います。(詳しく知りたい方は読んでみてください→リンク



 一方で、「パレート最適」の状態は、「いずれかの効用を下げずには他の効用を高めることが出来ない状態」を意味します。
 その中でも、事の善悪は置いておいて、上述の2名の囚人だけを見れば「A:黙秘・B:黙秘」という選択が、パレート最適であり、効用の和(合計2年)を最大化出来ている状態と言えます。

※ちなみにここはややこしいので読み飛ばしても良いのですが、上述の囚人のジレンマでは①だけではなく②もパレート最適な状態となっており、パレート最適な配分は一種のみとは限りません。
つまり、「A:自白・B:自白(懲役3年・懲役3年)」の場合のみ「A:黙秘・B:黙秘(懲役1年:懲役1年)」への選択の変更で2人同時に効用を上げることが出来るのでパレート最適ではないのですが、「A:自白・B:黙秘(釈放・懲役5年)」の場合にBの効用を上げる(自白して懲役5年→3年)ためには必ずAの効用が下がるため(釈放→懲役3年)、全体の効用の和が最大化するのは「A:黙秘・B:黙秘」ですが、「A:自白・B:黙秘」「A:黙秘・B:自白」を加えた3点がパレート最適と言えます)。

 ナッシュ均衡の囚人のジレンマと合わせると少し混乱しがちなので、一度その概念から離れて考えると以下の状況が想定されます。

 Aがナシを2個とBがリンゴを2個持っているとします。

 そのまま食べると効用はそれぞれ10。しかし、ナシもリンゴも両方食べたい2人それぞれが1個ずつ交換すると、両方とも食べられることで効用が共に15になるとすれば、交換後の状態がパレート最適となります。

 また、例えばAとBがナシとリンゴを2個ずつ持っているケースでAがナシ嫌いである場合、Aがナシを無償でBにあげればBの効用が上がってパレート改善することになります。つまり、Aは「ナシ0個・リンゴ2個」、Bは「ナシ4個、リンゴ2個」で「平等」ではありませんが、いずれにしてもナシを食べないAの効用を下げずにBの効用を上げることができ、BがAに対して代わりにリンゴを一個でもあげた場合にはBの効用が低下するため、無償提供を受けた状態がパレート最適と言えます。

※なお、経済学では「無差別曲線」と「予算制約線」が交わる均衡点をパレート最適と言い、個人の効用が予算制約内で最大限に満たされる状態を言います(詳しく知りたい方は読んでみてください→リンク


 概念の説明が長くなりましたが、つまりこのナッシュ均衡とパレート最適(かつ効用の和の最大化)が放っておいても一致するのであれば、政治的介入がなくとも底上げ的に「みんな」が幸せ(パレート最適)になれるのですが、現実的には自然体では個人は自分の利得を追求してナッシュ均衡のみの状態に近づく事が往々にしてあります。

 具体的事例は多数ありますが、例えば発電所の問題で言えば、火力発電所であれ、原子力発電所であれ、地域住民としては自分の住居地には作って欲しくないというのが一般的だと思います。

 しかし、全員が自分の利得のみを追求し、「電気はしっかり使うけれど、発電所はどこか遠くに作って欲しい」と言い出せば(ナッシュ均衡)、「発電が出来ない」、あるいは「高コストとなる離島からの発送電」等の選択となり、効用の最大化は実現出来ません。

 よって、例えば「電源三法交付金」により政治的な調整を行い、パレート最適に近づけるための政策を行う事がこのジレンマを解消するための政治の役割となっています。

※電源開発が行われる地域に対して補助金を交付し、これによって電源の開発(発電所建設等)の建設を促進し、運転を円滑にしようとするもの


 また、もちろん法律や条令、あるいは補助金だけではなく、「100%満足してもらえなくとも、少しでも多くの住民に納得してもらえるだけの努力をし、政治的な合意形成を図る」ことも政治(政治家)の役割と言えます。

 更に、誤解を恐れずに言うと「ナッシュ均衡」と「パレート最適」な状態を一致させ、個々人の利益追求(ナッシュ均衡)がみんなを幸せにする(パレート最適)なルールを作る事が政治の役割の一つでもあると思っています。
 
 もちろん上述のように「パレート最適」が「平等」とは大きくかけ離れるケースも発生し得るため、色々と合わせて考えなければならないのですが、いずれにしても政治家たるもの本質を理解し、「特定地域のみ」「支援団体のみ」あるいはもちろん「票に繋がるかどうか」等の個人的損得勘定ではなく、大所高所から政治に関わる必要があると思っています。

| 言論・政策 | 23:40 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

経済学的立場から、政治を考えていらっしゃるところが、面白いです。
ナッシュとパレード。今度、もっと詳しく教えてほしいです。実に、面白い(#^.^#)

| ヨーコ | 2014/01/03 17:12 | URL |

Re: タイトルなし

>>ヨーコさん
今ほど読み返してみましたが、多少の概念的基礎知識がないとちょっと分かりづらいかもしれませんね。
ただ、一つ言えるのは経済学は数式も用いながら長年研鑽に研鑽を重ねてきた学問・モデルであり、理論としてはかなりしっかりしているので政治はもちろん、社会生活でも役立つ理論や概念の宝庫だと思っています。
同窓と話す際はついつい共通理解のある「用語」に甘えてしまいますが、やはり人に伝えるために文章にすると自分の中でも大分整理されます。リクエスト承りました!

| 金田英樹(かなだひでき) | 2014/01/04 00:05 | URL |















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