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大津町議会議員 金田ひできの『新風!』

熊本県大津町の議会議員、金田ひできのブログ 『新風(しんぷう)!』

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「学力」の経済学 ~"ニンジン作戦"は効果があるのか?~

【「教育経済学」という分野】
 こちらでも予告していた「我が子をメシが食える大人にする(花まる学習会)」講演会を無事成功裏に終えることができました。

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 その講演会のなかでも紹介のあった書籍である『「学力」の経済学』を読んでみたので、私の考えと合わせて共有させていただきます。

 この書籍は「教育経済学者」の立場から書かれた書籍です。 

 経済学は、定量データや数式を用いて「資源の最適配分(効用の最大化)を考える学問」と言えますが、教育経済学とは、教育を経済学の理論や手法を用いて分析することを目的としている応用経済学の一分野で、「教育の経済的効果(費用対効果)」、「教育における効率性と教育計画」「教育の便益」などを経済学では一般的な統計などの手法を用いて分析するものです。


【"ニンジン作戦”は効果があるのか?】
 当該書籍は、教育は誰しもに個別の経験、それに基づく考え・理念のある分野であるため議論になると、必ず「私の体験ではこうだ」「こういったやり方で成果が出た」「こうであるべきだ」という個人の信念や一つの成功例などに基づく"根拠が薄弱な考え方"が横行しがちであり、しかもそれらの中には統計的検証がなされないままに「定説」となってしまっているものが多数あるという現状に疑問を呈すところから始まっています。

 そういった定説として、例え「ご褒美で釣っては”いけない”」、「ほめ育てはした方が”良い”」「子供には勉強するように言うべき」「少人数学級は効果が”大きい”」などの事例が挙げられていますが、定量的なデータや実証実験の結果からそれらを否定しています。

 また更に、次のような事象を具体的な定量データや実証実験結果を元に解説しています。


■「ご褒美」はあげ方を工夫すれば効果がある
※子ども達は点数の上げ方(=勉強の仕方)を明確に分かっているわけではないため、”結果(例:テストで満点を取ったら)”ではなく“過程(例:毎日1時間勉強する、特定の本を読む)”に対してご褒美を与えた方が効果的。

■褒めるのであればもともとの”能力(=頭の良さ)”ではなく”努力”をほめる

※むやみやたらに能力をほめると反省する機会を奪うとともに実力の伴わないナルシストを育て、結果として学力を低下させる。努力をほめられた子どもは悪い成績を取っても、それは「能力の問題ではなく努力が足りないせいだ」と考える。 「あなたはやればできる」ではなく、「今日は1時間も勉強できた」 「今月は遅刻や欠席が一度もなかった」等と具体的に達成した内容を挙げることが重要。

■“就学前教育(幼児教育)”が子どもの総合的な学力向上において最も影響(効果)が大きい
※経済学には「教育の収益率」という概念があり、「1年間追加で教育を受けたことによって、その子どもの将来の収入がどれくらい高くなるか」を数字で表すが、特に収益率が高いのは子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)。 子どもの将来の収入は自立した生活を送るためにも重要であるため、収益率を考える現実感覚を持っておくことは損にはならないはず。

■「勉強しろ」は逆効果
※父母ともに「勉強するように言う」のはあまり効果がなく、特に母親が娘に対して「勉強するように言う」のは逆効果。一方で「勉強を見ている」または「勉強する時間を決めて守らせている」という、親が自分の時間を犠牲にせざるを得ないような手間暇のかかるかかわりは効果が高い。

■子どもの頃は、早期に文字や九九等を覚えさせるなどの英才教育よりも、誠実さ、忍耐強さ、社交性、好奇心の強さ、などの”非認知能力”の向上が重要である
※学力のアドバンテージはそのうち追いつかれて消えてしまうが、身に着いた”姿勢”は簡単には変わらず、その姿勢が結果として学力の向上に大きく影響する

■少人数学級は多額の費用がかかるものの学力向上にはほとんど効果がないが、能力別クラスには一定の効果がみられる
※少人数クラスも全く効果がないわけではないが、例えば40名を20名にした程度では殆ど効果が見られないため、同じ予算を使うのであれば他の施策を選択する方が合理的。


【「経済学」的手法を用いる意義とその効果】
 もちろん、数字や統計が全てではなく「例外」も多数存在します。したがって、家庭においては保護者が、学校においては教職員が一人ひとりと向き合い、理解する事が前提になります。 また、数値化が難しい項目も確かに存在します。

 しかしながら、公共政策の議論において統計結果もロジックもなければ単なる持論のぶつけ合いや水掛け論にしかなりません。結果として、経済学的に言えば「効用(利益)の最大化」を実現する選択がなされず住民が不利益を被る恐れが出てきます。

 特に集団教育において『政策の平均的な効果』も考える必要のある教育行政において、この”具体的なデータ”に基づく「教育経済学」の理論を知る事は有意義です。また、各家庭において時には悩みながら子育てをしている保護者の方にとっても一つの参考になるのではないかと思います。

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 教育分野に限らず行政においては上述の少人数クラスをはじめ「効果(および費用対効果)」の検証が軽視されがちであると常々感じています。

 しかしながら、予算的制約があるなかで数ある施策のうち「最小の経費で最大の効果」をあげられる政策が一体何かということを定量的にも検証し、必要に応じて見直しをしていくことは非常に重要なことです。

 「政治を経済で紐解く」ことに関しては当該ブログでもこれまで何度か取り上げていますが、教育分野においてもこうした統計データや実証実験に基づく客観的な視点や手法をより一層取り入れることで議論や教育の質が向上し、結果として子どもたちの学習環境や将来をより豊かなものしたいと思っています。

| 言論・政策 | 13:27 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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