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大津町議会議員 金田ひできの『新風!』

熊本県大津町の議会議員、金田ひできのブログ 『新風(しんぷう)!』

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行動経済学とナッジ理論

行動経済学とナッジ理論
 行動経済学に「ナッジ(Nudge)」という概念があります。直訳すると「肘で軽くつつく」という意味で、掻い摘んで言うと「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」です。

 まず、行動経済学とは、「心理学を応用し、人間は情報や感情に流されて動くという点を読み解く」学問です。

 経済学では、全ての市場参加者は、経済的に合理的な判断をすることを前提に置きますが、現実の人間は必ずしも合理的には行動しません。

 例えば、子どもの夏休みの宿題、または大人であっても仕事の〆切など、早めに取り掛かって終わらせた方が心理的な負担もなくなり、急な予定で間に合わなくなったりするリスクも低減できて合理的ですが、目先の苦しさを避けたり、あるいは楽しみを選択したりで先延ばしにするという人は少なくないのではないでしょうか。

 そうした際、「どのようなアプローチをすれば行動に結びつける一押しになるか」という点に着目するのが、行動経済学のナッジ理論です。

 ナッジ理論で有名な事例として、オランダの空港で小便器の汚れがひどかったため、便器にハエの絵を描いた結果、トイレの床を汚す人が少なくなり、清掃費は8割も減ったという話があります。

 これは「人は的があると、そこに狙いを定める」という分析結果に基づいて、小便器を正確に利用させたという応用です。

 経済学で用いられる金銭的なインセンティブによる動機付けとは異なります。


ナッジを政策に

 さて一方で、行政において、家計や企業といった経済主体の行動を政策目標に沿うように誘導するためには金銭的なインセンティブが多く用いられます。

 例えば、太陽光発電を促したい、あるいは住宅の耐震化をすすめたいのであれば、税制の優遇や補助金制度を制度を設けることで利用を促します。

 しかし、税制優遇や補助金にはもちろん、税の支出(あるいは税収の減)が伴います。さらに、行動経済学の立場に立てば、人間は合理的な判断だけをするわけではなく、効果は限定的だとも言えます。そもそも、「元々実施するつもりだった人も補助される仕組み」のため、多額の費用を要する一方で「施策効果がどの程度かの判断が難しい」という側面も、しっかりとした効果測定をおこなっていない市町村も少なくありません。

 そこで、民間企業だけではなく、市町村においても、このナッジ理論を用いた仕組みを取り入れているところが徐々に増えています。

 例えば、一部の市町村では健康診断の案内文において、住民が判断に迷いそうな文言や分かりにくい記載を徹底的に見直して、面倒くささ等の心理的な障壁を徹底的に削減する、あるいは、未受診者・受診経験者などで案内文の内容を見直して各層にとってより訴求力のある文面を送るなどの取り組みを行い、これまでと変わらない経費で、成果を挙げています。

 大手の広告代理店などはナッジ理論が注目される以前から、経験則的にこうしたアプローチを取り入れています。私の以前勤めていた保険会社でも営業職員さんのツール(お客様への勧奨資料等)は、少しでも訴求力を上げるために、文字や文面で分かりやすさを工夫したり、心理学を用いたアプローチをしたりと、かなりシビアに作りこまれていました。営利企業にとって「募集に対する反応がない」というのは死活問題なので必死です。

 市町村においても福祉面に限らず、町主催の防災イベントや懇談会の広報、あるいは投票率向上に向けた施策など、このナッジ理論を応用した取り組みは色々考えられます。

 ナッジ理論には、もっと深い話や別の切り口もあるのですが、ようは漫然と情報発信や案内をするのではなく、「どのタイミング、どんな紙面・文面だったら、より多くの人に見てもらえ、さらに行動に移してもらえるのか」を、受信者の立場・気持ちになって考え、改善していくことが大切だということです。もちろん、単に何となくではなく、エビデンスに基づくことや、効果測定などを行うことは前提です。

 業務改善運動にも近いのですが、行政、企業を問わず、個々の職員レベルでもワークショップ的に自組織の案内などを徹底的に見直してみれば、色んな改善が見いだせるのではないかと思っています。

| 言論・政策 | 13:31 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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