【地域活性化政策】と【経済政策】は区別するべきである
現状では、『商業的な活性化を生むための経済的な施策』なのか、『絆や郷土愛を生むような地域活性に向けた施策』なのかが混同されているケースが散見されます。
後ほど具体例を挙げますが、本来「経済の活性化」は税収を増やし、雇用を生み出し、お金が適正に動くようにすることが目的であるにもかかわらず、実際には多くの取組みが”賑わい”を生むための「まちおこし(地域活性化策)」になってしまっています。
たとえば、「なんとなく人が集まるイベントをやってみる」、「何となく地域の景観を整備して観光スポットづくりを進めてみる」というようなケースが挙げられます。
もちろん、地域活性施策によって、郷土愛や絆を深めることは、地域の安全から福祉まで様々なことを改善する力になり意義深いことです。
ただ、私が指摘したいのは、こうした地域活性の部分は、少なくとも短期的には、経済施策とは、切り分けて施策と効果を考えるべきだということです。
具体例を示すと、それぞれの切り分けが出来ていない場合には、以下のようなことが起こります。

ここでは文化財振興施策のはずがいつの間にか経済施策に変わってしまったことで予算が膨らみ、結果として中途半端な取り組みは経済効果も生まず、さらに地域住民にとっても望まないものになってしまっています。
これとは逆に「予算を取るときは”経済効果”を挙げ、効果の検証段階では急に『絆が深まってよかった』と評価してしまう」ような「計画段階と検証段階で事業の目的が変わってしまう」ケースもあります。
次のケースです。

実際にこんなやり取りが良く起こるのですが、目的を明確化できていないため、次のような視点が抜け落ちて議論が進んでしまっています。
➤町のPRであれば、地元の幼稚園の関係者ではなく、”町外”の人に訴求できるイベントが必要です。 町民が100名参加することと町外民が100名参加することは、外貨獲得等を考えれば大きく意味合いが異なります。
➤「イベント」と「町の特産品や飲食店のPR」との”相性”を考える必要があります。 例えば、「有名パティシエのスイーツ限定販売」と「ローカルアイドル握手会」に集まる1000名はどちらの方が、町の特産品(飲食物)に興味を示してくれる割合が高いでしょうか。
➤そもそも訴求したいのはどのような層でしょうか。「町民・町外民」「若者・お年寄」「単身・家族連れ」「食べ物に興味がある層・賑わいが好きな層」などを決めて、それに基づいた内容にする必要があります。
➤イベント単体で言えば主催者収支は”赤字”です。 イベントを通して如何にリピーター(平時に町外から特産品を買いにきたり飲食店に食べにきたりしてくれる人達)を獲得するかという視点・仕掛けが必要です。
以上のように、絆や郷土愛を深めるための『地域活性化策』であれば事例のような議論と結果でも構わないのですが、『経済政策』であればまだまだ議論不足です。
民間企業がこうした検討フローを続ければ恐らく潰れてしまいますが、”自治体施策”として漫然と実施された場合には、「当日多数の人が訪れた」という結果だけを見て“成功事例”として扱われてしまいます。
【総括】
さて、【ケース1】においては、最悪のシナリオを描きましたが、身近な文化財が整備されることで地域住民からは喜ばれるケースもあると思います。
また、【ケース2】においては、地域の”賑わい”的なものを意図するのであれば、その結果として人々が活気づいたり郷土愛が深まったりしたのであれば、それはそれで評価されるべきことです。
しかしながら、少なくともいずれのケースにおいても、「地域活性化」のための投資として妥当な範囲でのみ予算を付けるべきであり、途中で怪しげな”経済効果”を持ち出して悪戯に予算を膨れ上がらせるべきではありません。
つまり、「”郷土愛の醸成”や”文化の保護”のためにいくら支出するのが妥当か?」という問いに基づいて事業計画を立てる必要があります。
また、次の段階として【ケース2】で書いたように、その問いの"最適解”として、手法や要因分析等を綿密に行うことで”血税”の投資対効果を高める必要があります。
簡単そうで中々できていない部分ですが、この”視点”と”手法”を変えるだけで、"最小の経費で最大の効果"を上げるために、町の政策の有効性もまだまだ伸ばすことができると考えています。
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